歯がなくなっていく原因は、う蝕や歯周病だけではありません。
日本ではあまり知られていませんが、「損耗症」という歯の病気が存在します。
「う蝕」「歯周病」「損耗症」これらを合わせて3大歯科疾患といいます。
損耗症には、4種類あります。
- 酸蝕症
- 咬耗
- 摩耗
- アブフラクション
それぞれについて説明していきます。
酸蝕症
歯の表面のエナメル質が酸によって軟らかくなった状態をいいます。この状態で歯ぎしりや強いブラッシングで力がかかると、一気に歯が削れていく可能性が高くなります。咬耗や摩耗を加速させるため、酸蝕症は損耗症の中でも最も注意すべき病気です。
う蝕菌が酸を作って歯を溶かすのは有名ですが、お口の中の酸はう蝕菌だけが原因ではありません。酸蝕症の原因は大きく分けると2つあります。
外因性(お口の外から入ってくる酸)
酢やワイン、レモン水、炭酸水、柑橘類などの酸性の強い飲み物や食べ物の頻繁な摂取
内因性(体の中から出てくる酸)
逆流性食道炎、頻繁な嘔吐など胃酸の逆流を伴うもの。
近年ではお酢を使った健康食品や炭酸水が手軽に買えるようになったため、酸蝕症の危険性は増加しています。また逆流性食道炎もよくみられるようになり、放置すると胃がんのリスクが高くなるため必ず医科を受診しましょう。
咬耗
歯と歯どうしが擦れあって起こります。食いしばりや歯ぎしりが多い方でよく見られます。ある程度は年齢とともに咬耗は進行するのですが、年齢相応以上に咬耗が進行している場合は要注意です。酸蝕症がある場合、歯が軟らかくなっているので咬耗の進行が急速に進みます。
摩耗
歯と歯以外のものが擦れてあって起こります。歯磨き粉を使って歯ブラシで強く歯を磨いていたり、硬いものを噛むことが多かったり楽器の演奏などをする方でよく見られます。とくに上顎の犬歯〜小臼歯(前から3番目~5番目の歯)は歯ブラシが強く当たる傾向があり、摩耗の起きやすい箇所です。
酸蝕症がある場合、歯が軟らかくなっているので摩耗の進行が急速に進みます。
アブフラクション
咬む力によって歯茎付近の歯に力がかかり、V字型に歯が削れた状態と定義されています (実在するかどうかはいまだに意見が分かれているところです)。
歯茎に近い部分の歯に欠損が起きることをNCCL(Non Carious Cervical Legion:う蝕ではない歯頸部病変)といいますが、このNCCLは酸蝕や摩耗、咬耗など多くの因子によって起こるといわれています。
以上のように、損耗症はまだ日本ではあまり知られていない疾患ですが進行すると歯がどんどん削れていき、審美的な問題などを引き起こす可能性があります。
重度の場合は歯全体に被せを入れて修復リハビリテーションが必要な場合もありますので、決して軽視することはできません。
損耗症が起こっていないか常にチェックし、もし起こっていた場合は部位や特徴によって原因を特定していくことが重要です。当院では、専門の知識をもったスタッフが損耗症の予防および治療に力をいれて取り組んでいます。
損耗症について気になることがございましたら、当院までぜひご相談ください。