「今別に歯が痛くもないし、噛めているし、困っていることは何も無い」
そう思っていませんか?
実はあなたの歯は気づかないうちに病気になっており、そのまま放置していると歯を失ってしまうかもしれません。
「歯周病」という病気をご存知でしょうか?「歯槽膿漏」という呼び方で最近ではCMなどでも取り上げられることが多くなりましたが、それには理由があります。
それは歯周病が「日本人が歯を失う原因の第1位」だからです。それだけでなく、実は歯周病は「世界で最も患者が多い病気」としてギネス認定もされているのです。
昔はむし歯が第1位だったのですが、フッ素を含む歯磨き粉の普及によりむし歯を予防することが可能になったため、代わりに歯周病が第1位となったのです。
それだけ私たちにとって身近な病気である歯周病とは、いったいどんな病気なのでしょうか?
歯周病の正体は、「歯の表面に付着した細菌性の感染物(バイオフィルム)が人体の免疫機能を刺激して起こる病気」です。
歯に限らず、体に細菌が侵入するとそれを阻止するために免疫が働いて炎症が起こります。細菌がいなくなると免疫は止まり炎症は消えますが、歯の場合は表面に細菌が付着し続けると慢性的に炎症が起こり続けます。その結果、特に自覚症状がないまま歯の周囲の骨が吸収し、最終的には歯を支えることができなくなって歯が抜けてしまいます。
また近年では糖尿病や肥満など、全身疾患との関連も報告されています。体の健康を維持するためにも、歯周病は無視できない病気なのです。
歯周病の原因は歯の表面に付着した細菌ですので、基本的にこれらの細菌を取り除くことで炎症がおさまり、進行を停止させることができます。
ではこの歯周病を治療するにあたって、最も大事なことは何だと思いますか?
実は歯周病治療において最も大事なことは、「日々の歯磨き」なのです。
え、なんで?とお思いになったかもしれませんが、どれだけ歯科医院で歯をきれいにしてもらったとしても、日々の歯磨きが不十分だとまたすぐに歯の表面には感染物(バイオフィルム)ができてしまいます。このバイオフィルムには薬などが効かないため、歯ブラシで物理的に除去するのが最も効果的なのです。
歯科医院では歯茎の上あるいは歯茎の中の歯石を取ったり、場合によっては歯茎の手術を行います。しかしそれは「歯の表面のバイオフィルムを日々しっかり除去できている」ということが前提です。日々のセルフケアができていない状態で歯石を取ったり手術を行っても、治療の効果がないどころかかえって状態を悪くしてしまう場合もあります。
ですので、歯周病治療においてはまず最初にセルフケアを向上させること、それを維持することから始まります。
具体的には、特殊な薬剤を使ってバイオフィルムに色をつけて磨けていない場所を確認したり、ブラッシングの方法や使う器具を改善していきます。歯への適合の悪い詰め物や被せ物が入っておりどうしてもバイオフィルムが溜まってしまう場合は、詰め物のやり直しをする場合もあります。
病気の状態や治療の効果を判定するためには「検査」が必要ですが、歯周病治療はそれらを数値化できる数少ない歯科治療です。歯周ポケットという歯茎の深さや歯茎からの出血の有無、根の分岐部における歯周病の進行度などをほとんどデータ化できます。
ですので、歯周病治療においては検査の重要性はとても高く、治療のステップごとに検査を行って治療効果の判定や治療方針の変更を行います。
そして歯周病は現在の考え方では「ステージ」と「グレード」という考え方で分類されています。
「ステージ」は歯周病が現在どれくらいまで進んでいるかを表しており、「グレード」は歯周病がどのくらいの速さで進行するかを表しています。
この2つの組み合わせにより、軽度の歯周炎+進行が遅い・重度の歯周炎+進行が速いといった具合に患者さまごとに歯周病の分類をすることができます。
そして歯周病の分類・診断により、患者さまへの治療のアプローチも変わってきます。