2025年6月01日
私が歯科医師になって経験が浅い頃、最も苦手に感じた治療が実は「根管治療」でした。
根管治療とは歯の根の内部をさまざまな器具や薬液を使って消毒する処置ですが、暗くて狭いお口の中の小さい歯の、さらに小さい根の中を治療するのは困難を極めました。
肉眼ではほとんど見ることはできず、手探りの状態でうまくいくかもわからない状態でなんとかこなしていき、治療の最後にレントゲンを撮影して根の中に薬が詰まっている状態を確認して一喜一憂していました。
そんな時、勤めていた医院で根管治療や歯周病をものすごく勉強されている歯科医師の先輩に出会い、専門医レベルの教科書を勉強しながら日々の臨床を指導していただく機会がありました。ちょうどその時からラバーダムや拡大ルーペも使用し始めて、診療スタイルや考え方が大きく変わったように思えました。
その後も国内外のセミナーを受講したり書籍を読んだりしながら研鑽を続けていくうちに、根管治療のやりがいやおもしろさを初めて実感する機会がありました。それは一度治療が行われた歯の根の先端に大きな病変ができており、通常であれば抜歯になるところを私が行なった再治療によって病変をキレイに治すことができたのです。
通常、根管治療終了後の3~6ヶ月後にレントゲンを撮影して病変の治り具合を確認します。それまで私は最初の神経を抜く処置は行なっていましたが、一度根管治療を行なった歯の再治療の経験はほとんどありませんでした。それは根管の再治療は最初の治療よりもはるかに難易度が高く、通常の方法では治すことが難しいため抜歯となる場合が多いからです。その難しい再治療症例をきれいに治すことができたとき、私の中で今までにない達成感と「これだ」という確信のようなものが生まれたのです。「病気を治す」という医療の本質を根管治療に見出したように思いました。
その後、マイクロスコープを使用してさらに難しい根管治療を行なったり通常の根管治療では治すのが難しいケースで根の先端を切除する手術を行ったりとさらに研鑽を積み、多くの患者さまのお悩みを解決することができました。もちろん私自身の知識や技術には限界がありますし、自分のレベルを超えるケースの場合は専門医へご紹介する場合もあります。時間やコストの問題、保険の診療報酬の点数の低さなどにより一般開業医で根管治療に時間やコストをかけられないという事情も十分理解しています。
しかし根管治療で困っている患者さまや歯を失った患者さまを少しでも減らしたいとの思いから、当院では保険診療においてもラバーダムやマイクロスコープを使用し、一般開業医でもなるべく高い水準を目指して根管治療を行っております。通常の根管治療では治すのが難しい場合は、自由診療でMTAセメントという特殊な材料を使用した根管治療や外科手術を選択することも可能です。
残念ながら根が割れてしまっていて根管治療ができなかったり、長期的な予後が期待できず抜歯となってインプラントやブリッジになる場合もありますが、患者さまとしっかりご相談したうえで当院にできることは全て行いたいと思っています。
また、根管治療だけではなくその後の被せなどの修復治療や歯周病治療、メインテナンスなどにも力をいれて患者さまの健康をトータルサポートしております。
開業してまだ間もないのですが、根管治療でお悩みの患者さまや以前勤めていた医院で担当していた患者さまも多く来院していただき日々充実して仕事を行うことができています。これからも患者さまやいつも診療を支えてくれるスタッフのために全力を尽くしていきたいと思います。



