2025年11月20日
そんな方に知っていただきたいのが、外科的歯内療法です。
これは、通常の根管治療(歯内療法)では改善が難しい場合に選択される、歯を保存するための外科処置です。
当院でも、マイクロスコープやMTAセメントを活用した精密な外科的歯内療法を行っています。

1. 外科的歯内療法とは?|根管治療の次の選択肢
外科的歯内療法とは、歯茎の切開や骨の削合を伴う外科処置を加えた根管治療のことです。
出血を伴う処置になりますが、以下の目的で行われます。
● 外科的歯内療法の目的
通常の根管治療では治らない感染や炎症を改善する
抜歯の診断を受けた歯を保存する
痛み・腫れ・レントゲンで見える根尖病変を取り除く
根管治療を何度行っても治らないケースや、物理的に根管まで到達できない場合に有効な治療法です。
2. 外科的歯内療法の代表的な治療法
◆ 2.1 歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)
最も一般的な外科的歯内療法が、この歯根端切除術です。
● 手術の流れ
①歯茎を切開し、歯根の先端(根尖)を露出させる
②感染した根の先端を3mm程度切除
③切断面をマイクロスコープで詳細に確認
④逆根管充填(根の先端側からMTAセメントなどを流し込む)で封鎖
⑤歯茎を縫合し、自然治癒を待つ
● 使用する材料
現在の第一選択:MTAセメント
→ 封鎖性が高く、生体親和性に優れ、治癒率を大きく向上させる
● 歯根端切除術の効果
根管治療で治らなかった根尖病変の治癒
痛み・腫れの改善
レントゲンで黒く写っていた病変部が骨として再生する可能性
● 適用しやすい歯
主に「6番」(第一大臼歯)まで
→ 7番(第二大臼歯)は器具が届きにくく、適応が難しいことが多い
◆ 2.2 意図的再植術(いとてきさいしょくじゅつ)
一度歯を抜歯し、口腔外で根の処置を行った後、再度元の位置に戻す特殊な治療法です。● 手術の流れ
歯を慎重に抜歯
外で根尖病変の除去・逆根管充填を実施
処置した歯を元の位置(抜歯窩)に戻し再植
● 適応ケース
歯根端切除術が難しい「奥歯(7番など)」
どうしても歯を残したい場合
ブリッジの支台歯など、喪失すると機能に大きな影響が出る歯
● 注意点・リスク
歯根膜の損傷 → アンキローシス(骨と癒着)のリスク
抜歯時の歯根破折のリスク
生着しない可能性もあるため、術者の経験が重要
原則として、歯根端切除術が可能な場合には、そちらを優先します。
3. 外科的歯内療法が必要になるケース
● 根管治療をしても治らない場合
→痛みや腫れが繰り返す
レントゲンで根の先に黒い影がある
→根尖病変が長期間改善しない
● 通常の根管治療が困難な場合
① 被せ物(クラウン)の問題
・強度が高いジルコニアクラウンなど
・自費クラウンを外したくない場合
② 土台(コア)の問題
・金属製ポストが深くまで入っており除去が困難
・除去時に歯根破折のリスクが高い
③ 根管内の問題
・治療器具(ファイル)が根管内で折れている
・根の形態が複雑で通常の根管治療が不可能
4. 外科的歯内療法ができないケース(禁忌)
以下の場合は手術自体が危険となることがあります。
・コントロール不良の高血圧・糖尿病など
・抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)による止血困難
・手術に耐えられない全身疾患
まずは医科との連携の上で、安全性を確保する必要があります。
5. まとめ|外科的歯内療法は「抜歯の前に考えるべき治療」
外科的歯内療法は、
「根管治療でも治らない」「抜歯と言われた」患者様の大切な歯を残すための強力な選択肢です。
当院の外科的歯内療法の特徴
・マイクロスコープを用いた精密処置
・MTAセメントによる高い治癒率
・症例に応じて歯根端切除術・意図的再植術を使い分け
・他院で「難しい」と言われた症例にも対応(要相談)
根管治療が長引いている方、痛みや腫れが続く方、抜歯と言われて不安な方は、どうぞ一度ご相談ください。
あなたの歯を保存できる可能性は、まだ残されています。
